ノロウイルス感染症は、主に食べ物などが原因で感染する病気です。冬季に流行しやすいと言われていますが、実は冬に限らず他の時期にも感染の恐れがあるのはご存知でしたか?
しかも、ノロウイルスはとても感染力が強いウイルスです。もし家族に感染者が出たら、適切に処理しないとあっという間に家族全員に広がってしまうことに…。
そこで今回は、感染を防ぐための予防法や、正しい消毒方法などについてお話していきます。家族を守るため、ぜひ正しい知識を身につけましょう。
ノロウイルスの原因は?感染経路は主に3つ!
引用 大幸薬品
ノロウイルス感染症とは、急性胃腸炎を引き起こすウイルス性の感染症のことです。赤ちゃんからお年寄りまで誰しもが感染する恐れがあり、時には死に至ることもあります。
この病気の原因は、主に「食べ物」。でも、どんな食べ物から、どのようにして体内に入ってくるのか不思議ですよね。それは、以下の3つの感染経路があります。
予防策を立てるには、感染経路を知ることがとっても大切!ということで、今回は栄養士の仕事をしているみきちゃんに詳しくお話を伺います!
(栄養士)
食に関わる仕事をしているので、ノロウイルスについての知識はばっちりです!まずはノロウイルスにかかってしまう原因を探っていきましょう。
牡蠣などの二枚貝からの感染
ノロウイルスは、主に食べ物が原因だと先述しました。その食べ物とは、牡蠣やシジミ、ハマグリなどの二枚貝です。
貝からノロウイルスに感染ってどういうことだろう?ノロウイルスは、もともと二枚貝の中に生息しているの?
(栄養士)
そうではないの。貝から感染してしまう原因は、以下のような経路があるのよ。
- ノロウイルスに感染した人の便が下水に流れる
- 一部が下水処理をかいくぐり、河川から海に排出
- 二枚貝がえさと一緒にウイルスを体内に濃縮
- ウイルスに汚染された二枚貝を食べた人が感染
ノロウイルス感染症は、この1~4の無限ループにより発症します。流行の季節は冬で、12月~2月にピークを迎えます。
しかし、このように下水内に大元の原因があるため、年間を通して発症する可能性があるんです。
(栄養士)
私も実際に5月に感染しちゃったことがあるよ…。
ノロウイルスって冬を過ぎたら感染の心配は一切ないと思ってたよ!でも、貝はおいしいから食べたい…。どうすれば感染を防げるの?
(栄養士)
貝を食べる時は、十分な加熱を行うようにするといいよ。ただ、ノロウイルスは湯がいた程度では死滅しないから、しっかりと中まで火を通してね。
ノロウイルスは、非常にやっかいなウイルスです。乾燥や熱にとても強く、しかも自然環境下でも長い間の生存が可能なので、ちょっとやそっとでは簡単には死滅しません。
さらに、ノロウイルスは人の腸管内のみで増殖します。感染力もかなり強いことが特徴です。少量のウイルス(10~100個)でも感染・発症してしまうため、例え採れたてピチピチの貝だとしても発症する恐れがあるんです。
そのため、生牡蠣などは要注意。ノロウイルスから完全に体を守るには、鮮度に関わらず十分な加熱を行うようにしましょう。
ちなみに、私のような食品を扱う仕事をしている人は、牡蠣など感染する恐れがある食べ物は食べないよう言われているわ。
か、牡蠣好きには辛いわね…。
ノロウイルスに汚染された食材を食べる
生きている以上、食事は絶対に欠かすことができないものです。しかし、その食事は自宅での他に、レストランなどで外食する時もありますよね。または、幼稚園や学校での給食、さらには病院での入院食など…。
このように、様々な場所で食事をする機会がありますし、いろんな人が作った食べ物を食べる機会が多くあります。
その時、ノロウイルスに感染してしまった人が食品を扱うとその食品が汚染され、それを食べたことで感染してしまうことがあるんです。
食べ物を通しての感染ってわけだね。
これに関しては、食べる側の人には防ぎようがないわよね…。
そうなのよ。だから私たちのような職業の人間がノロウイルスにかかってしまうととっても大変なの。感染したら治るまで絶対仕事はできないわ。
食べる人にとっては、作っている人がノロウイルスにかかっているか、ましてや体調不良を起こしているかどうかなんてまったく分かりません。ですから、感染経路としては最も怖く、さらに一気に広まってしまう要因ともなり得ます。
そのため、作る側の人は吐き気や下痢などの不調が出たら、すぐに病院へ行くようにしましょう。これは多くの人に感染しないために重要なことですので、自分だけの問題ではないと思うことが大切です。
糞便や吐しゃ物の処理後の感染
ノロウイルスは、食べ物の他に汚物から感染することも多くあります。
ノロウイルスに感染すると、嘔吐や下痢を繰り返します。そうなると、その処理を行う人が出てきますよね。その場合、処理時に手にウイルスがついたまま調理などを行ってしまうと、その料理を食べた人も感染してしまうことになります。
また、嘔吐時に吐しゃ物などが飛沫し、それを他人が吸ってしまったことによる「飛沫感染」。
処理が適切に行われなかった場合、空気中に舞い上がってしまった残ったウイルスを吸ってしまったことにより起こる「空気感染」などもあります。
なるほど。ということは、ノロウイルス対策は汚物の処理を適切に行うことが重要なのね!
(栄養士)
そうなの。しっかり処理しないとあっという間に家族全員に広まってしまうから、ここでしっかり『適切な処理方法』を学んでおきましょう!
ちなみに、冬に流行する病気に「インフルエンザ」もありますよね。インフルエンザは予防注射を接種することで感染を防ぐことができます。0歳児も予防接種を受けることができますが、誕生日によっては受けられない場合もあります。
ノロウイルスの消毒に必要なものは?
嘔吐物や排泄物には、大量のノロウイルスが含まれています。自分や家族が感染してしまったとき、その処理方法を誤ると一気に感染が広まってしまうことに…。
それを阻止するには、正しい処理の手順をしっかり知っておくことが大切です。
汚物は、きれいに掃除しただけではウイルスは取り切れません。そのため消毒する必要があるのですが、その時に意識すべきポイントは、「乾燥させない」ということ。
乾燥してしまうとウイルスが空気中に舞い上がってしまうため、できるだけ迅速に処理するよう努めましょう。
(栄養士)
さらに、処理をするときは自分もしっかり感染予防をしてから行う必要があるの。着の身着のまま、さらには素手で…なんて絶対だめよ!
どれも感染予防には欠かせないものだというのは分かるけど、使い捨ての手袋やガウン等を常備している家庭は少ないんじゃないかしら…。
そうなんだよね~。だから、こんなものを買っちゃった!
な、なんかすごく本格的ね…!?
マイエンジェルに何かあっては遅い!!備えあれば憂いなしってね。
備えあれば憂いなし…とはいえ、嘔吐物処理用のキットも安くはありません。たしかにキットの方が間違いなく感染予防にはなりますが、できればお金をかけず、家庭にあるもので代用したいですよね。
そんなときは、手袋はビニール袋で代用できますし、ガウンを付ける代わりに汚れてもいい服を着ればOK。とにかく汚物に触れないようにすることが大切です。
また、空気中に舞ってしまったウイルスを吸い込まないようにするマスクは、以下の方法で手作りすることができます。
このようにして装備を完璧にしてから処理を始めるようにしましょう。ただし、その処理の仕方にもいくつかポイントがあるんです。
消毒液の作り方!アルコールはNG!?
「消毒」というと、アルコールを思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、なんとノロウイルスにはアルコール消毒が効かないんです!なんとも、本当にやっかいなウイルスですね…。
では、どのようにして消毒すればいいのかというと、使うのはアルコールではなく『次亜塩素酸ナトリウム』。
あまり聞きなれない名前かもしれませんが、実はこれはキッチンハイターなどの塩素系漂白剤にも含まれています。つまり、家庭にあるもので簡単に代用可能なんです!
ただし、塩素系漂白剤は消毒液に使うには少し濃度が濃すぎます。そこで薄めて使う必要があるのですが、その倍率はおよそ50倍。
ご、50倍…?なんだか数字だけだと全然ピンと来ないんだけど…。
(栄養士)
大丈夫。数字だけ見ればたしかにちんぷんかんぷんだけど、消毒液の作り方はとっても簡単!
準備物3つ、たったの2ステップで50倍の濃度の消毒液が完成です。特別なものは何も必要ないので、家庭ですぐに作ることができますね。
消毒液は作り置き可能?
こんなに簡単に作れるなら、いっぱい作っておいてもしもの時に備えておこうかな!
それはちょっとおすすめできないわ。次亜塩素酸ナトリウムは、日が経つにつれて消毒効果が弱くなってしまうの。
そうなんです。次亜塩素酸ナトリウムは自然に分解してしまうため、ずっと同じような効果が期待できるわけではありません。備えとして作っておいたはずなのに、まったく何の消毒効果も得られない…なんてことも。
さらに、日光や温度、薄めた水などの影響で、塩素ガスも発生してしまいます。そのため、消毒液を作ったらきちんと使い切る必要があるのですが、発症中はいつ下痢や嘔吐をしてしまうか分かりません。
500mlの消毒液を一度には使い切れないかもしれませんし、せめて治るまでの間だけでも保管しておけたら…と思いますよね。
そんな時は、なるべく直射日光の当たらない場所に保管しておくといいでしょう。また、分解しにくいように作られた消毒スプレーも市販で売られています。
「作るのが面倒」「もしもの時のためにいつも常備しておきたい」という方にはこちらがおすすめです。ノロウイルスだけではなく、幅広いウイルスや細菌対策にも使えますよ。
ノロウイルスの消毒方法!床などは拭き取りが◎
装備も完璧、消毒液も準備できたら、いざ汚物の処理を行っていきましょう。
まずは窓を開けて換気。感染を拡げないため、その部屋には誰も立ち入らないようにしてください。諸々準備が整ったら、以下の手順で処理を進めていきます。
引用:株式会社オーラック
- ペーパータオルなどで汚物を静かに拭き取る。
※この時、紙おむつや生理用ナプキン、ペットシーツなどの吸水性に優れたものを使うと、より素早く拭き取ることができるのでおすすめです。 - 拭き取ったものはビニール袋などに入れて密閉し、ウイルスが空気中に漂わないようにする。
- 作った消毒液で浸すように消毒。
- 最後に綺麗に水拭きをしたら完了。
- 装備していたマスク、手袋、ガウンなども袋にしっかり密閉して廃棄する。
床などに嘔吐したとして、その場所から半径2mくらいまではしっかり消毒してね。目には見えなくても、結構遠くまで飛沫していることがあるの。
手順としては結構簡単だけど、いろいろポイントがあるんだね。
でも、衣類や布団などの拭き取りでの消毒ができない時はどうしたらいいの?やっぱり捨てないとダメなのかな…
(栄養士)
そんなことないのよ。しっかりとウイルスをやっつけられれば、捨てなくてももう一度使うことができるの。
ノロウイルスの消毒方法!熱湯での消毒も有効!
汚物で汚れた、もしくは処理時に着た衣服など。例え汚れても良いと思った洋服でも、捨てるのはなんだかもったいないですよね。かといって、他の洗濯物と一緒に洗濯機で洗う、なんてことも言語道断。
または、嘔吐した場所が布団やじゅうたんなどの場合も、拭き取りだけでは十分には消毒できていません。過去には、2週間前にノロウイルスにより汚れてしまったカーペットが原因で感染したという事例もあります。
そんな衣類や寝具、じゅうたんなどは、出来るだけ嘔吐物を拭き取ってから、きちんと消毒と洗濯を行えば再度使用することが可能です。
消毒…。さっき言ってた「キッチンハイター」を薄めて作った液を使えば良いの?
それもそうだけど、衣類などの消毒にはもうひとつ欠かせないことがあるの。それが「熱処理」よ。
実は、ノロウイルスの消毒には85度1分以上の熱処理が有効なんです。ノロウイルスは熱にも強いと先に述べはしましたが、85度以上の熱で1分以上処理をすると、ウイルスの感染力はなくなることが分かっています。
具体的な方法としては以下の通り。
- 付着した汚物を拭き取る。
- 洗剤を入れた水の中で揉み洗いする。
- 85度以上の熱水での洗濯が可能な洗濯機なら、それで洗濯をする。
そうでない場合は、次亜塩素酸ナトリウムで作った消毒液で消毒をする。 - 布団などすぐに洗濯できないものは、スチームアイロンや布団乾燥機などで熱を加えると◎。
- 消毒に用いた器具などの消毒も忘れずに行う。
(栄養士)
この手順通りでなくても、熱湯処理スチームアイロンでの熱処理を行い、その後洗濯機で洗濯すれば、完璧にウイルスをやっつけることができるね!
嘔吐物等の処理が終了したら、正しい手洗いを行うことで完璧に感染を予防できます。もし処理後に急いでやらなければいけないことがあったとしても、必ず忘れずに手洗いを行うよう気を付けましょう。
まとめ
- 感染経路を知ることで予防をすることができる。
- ロタウイルスの感染経路は、「二枚貝からの感染」「汚染された食品を食べたことによる感染」「汚物からの感染」などがある。
- 自分や身近な人が感染したら、正しい処理方法を行うことで感染防止ができる。
- 汚物の処理は、なるべく迅速に行う。また、乾燥してしまうとウイルスが空気中に舞って感染の原因となってしまうので要注意。
- 処理時はマスクや手袋、ガウンなどを用いて感染を予防した上で行う。
- 消毒液は、キッチンハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムなどで作ることができる。また、85度以上の熱で1分以上行う熱処理も有効。
保育園や幼稚園、学校などの集団施設やショッピングセンターなどの商業施設など、いつどんな場所でも感染する可能性はあります。
しかし、あなたに正しい知識があれば感染の拡大を防ぐことができます。ロタウイルスを予防するための知識を身につけ、大切な家族を守るよう努めましょう。