赤ちゃんの発達スピードは個人差があるものなので、他の子と比べて成長が遅く感じることはよくあることです。しかし、そろそろはいはいをする時期なのにする気配がない。むしろ、はいはいではなくお尻歩きを始めた!という子も一定数いるんです。
このお尻歩きをする赤ちゃんのことを、通称シャフリングベビーと呼びます。シャフリングベビーとは一体何なのか。その特徴や発達障害との関係なども気になりますよね。
今記事では、実際に娘がシャフリングベビーだった私の体験談を踏まえ、改善策やその後の成長の様子についてもお話していきます。
シャフリングベビーとは?特徴は発達の遅れ?
赤ちゃんの運動能力の発達は、多くは以下のように進んでいきます。
- 首すわり
- 寝返り
- ひとりすわり
- はいはい
- つかまり立ち
- つたい歩き
- ひとり歩き
この成長過程は母子手帳などにも記されているので、「次はこんなことができるようになるのかな」という目安にもなりますよね。
私もこの成長過程を参考に、娘の発育を楽しみにしてたよ!でも、娘は首すわりやひとりすわりは目安通りだったのに、なかなか寝返りとはいはいはできなかったの。
ただ、0歳当時の娘はかなりのむちむちボディ。そのため、私は特に気にもせず「きっと体が重くてなかなか動けないのだろう」と思っていました(笑)
やがて寝返りは7ヶ月でできるようになりましたが、はいはいなどは一向にしないまま、娘は11ヶ月に突入。はいはいができるようになるその瞬間を今か今かと待っていた私は、はいはいのきっかけになれば…と少し離れたところから娘を呼んでみることに。すると、娘はまさかの行動を取ったんです。
どうにか私の元へたどり着きたい娘は、はいはいではなく、なぜか突然「お尻歩き」を始めました。
移動手段は「お尻歩き」
座ったままの姿勢で、器用に足の力と腰をゆすった反動で進む娘。どこに行っても珍しいと言われ、私もそのユニークな動きを面白く見ていました。
しかし、実はお尻で移動する赤ちゃんはそう珍しいものではありません。
このように、はいはいではなくお尻で移動する赤ちゃんのことを、『シャフリングベビー』と言います。日本では他に『いざりっ子』などとも呼ばれており、約40人に1人の割合で存在するという研究結果もあるんです。
参考 【子どものからだと健康】第1回 ハイハイしない子ども – CRN 子どもは未来である
シャフリングベビーの特徴は、お尻歩き以外にもいくつかあります。そして、ほとんどのシャフリングベビーが、これらの特徴の多くに当てはまっているようです。
- うつぶせを嫌がる
- 寝返りができるようになるまで時間がかかる。もしくは、まったくしない
- はいはいをしない
- 両脇を抱えて抱き上げても足を曲げたままで、空中で座っているような姿勢をとる
- つま先で立つ
- 人見知りやいないいないばぁなど、知的発達は通常通り
実際に、娘はなんと満点獲得!これらすべての項目に当てはまりました。
シャフリングベビーの成長の様子
シャフリングベビーは、うつぶせの姿勢や足裏を床に付けることを嫌がります。そのため、うつぶせから発展していく寝返りやはいはい、さらに歩き始めなどが発達目安より遅れてしまう傾向があるんです。
私の娘も、やはり目安通りには成長していきませんでした。その実際の発達の流れがこちらです。
- 首すわり
- ひとりすわり
- 寝返り
- お尻歩き
- つかまり立ち
- つたい歩き
- ひとり歩き
- はいはい
成長の目安では、はいはいは7〜9ヶ月頃に見られるようですが、娘がはいはいをしたのはひとり歩きができてから。シャフリングベビーは、このようにお尻歩きを経てからつかまり立ち、ひとり歩きへと移行していくことが多いです。
また、シャフリングベビーが歩き始めるのは1歳半〜2歳頃になることが多く、平均では1歳9ヶ月で歩き始めます。このように、はいはいを経てから発達していく赤ちゃんよりも、ゆっくりと成長していくシャフリングベビー。なかなか成長が進まなくても、急かしたりせずに見守ってあげることが大切ですね。
ただ、私の娘はつかまり立ち〜ひとり歩きまでのスパンがかなり短く、1歳の誕生日前に初めて手を離して数歩歩きました。と言っても、ひとり歩きをマスターする1歳3ヶ月までお尻歩きは健在でしたが(笑)
そんな娘の発達の様子は、こちらで細かくご紹介しています。シャフリングベビーではないけれど、子供の成長過程がゆっくりで悩んでいるという方もぜひご覧ください。
シャフリングベビーは遺伝が原因?
オーソドックスな成長の流れをたどらないシャフリングベビー。「もしかして、育て方を間違えたのでは…」と心配になる親御さんも多いかと思います。
しかし、シャフリングベビーの原因は未だ医学的には明らかになっていません。ただ、以下のような所見があることから、遺伝や生活環境、赤ちゃんの性格などが関係しているのではないかと言われています。
- シャフリングベビーの40%が、親や兄弟などの身内もシャフリングベビーだった
- シャフリングベビーは、5〜9月生まれが多い
- シャフリングベビーの多くは、臆病で慎重派な性格
- 自分が楽な行動を取る
- 神経質で、手足が汚れることを嫌う
娘の場合は、遺伝要素以外すべてがドンピシャです。誕生日は9月。慎重で臆病なため、人見知りが激しい。自分が楽になるよう、人に物を取ってもらいたがる。手足が汚れることを嫌い、つかみ食べはほとんどしない。手が少しでも汚れたら拭いてもらいたがる、など…。
ちなみに誕生日が関係しているのは、ちょうど寝返りやはいはいなどをし始める時期が秋冬であることが理由です。
気温が低いと、赤ちゃんを心配して厚着をさせてしまいますよね。しかし、体が未発達の赤ちゃんにとっては、厚着をすることで動きにくさを感じてしまいます。それが動きを妨げる原因となり、余計に寝返りなどを遅らせるのでは…と考えられているのです。
シャフリングベビーと発達障害の見分け方
成長が遅れるなんて、シャフリングベビーは発達障害の一種なのでは…?と考えて不安になってしまいますよね。しかし、シャフリングベビーであっても過度に心配することはありません。
1980年代に福岡県で行われた調査では、シャフリングベビーのことを次のように記しています。
大部分は1歳6カ月以前に歩行を獲得しているという事実を考慮すれば,「いざり」は歩行予後に関しては殆ど心配する必要がない状態であるという一般への啓蒙が必要と思われた.
引用 1歳6カ月児健診におけるshuffling baby の疫学的調査
つまり、シャフリングベビーの発達はたしかにゆっくりではあります。しかし、成長の目安に沿って発達していく赤ちゃんたちと、特別大きな違いは見られないんです。
シャフリングベビーの多くは2歳までにひとり歩きができるようになり、その後の成長にも特に問題は見られません。ですから、シャフリングベビーは『珍しい存在ではあるけれど、異常なわけではない』と考えられています。
シャフリングベビーの注意すべき症状
しかし、お尻歩きが稀に障害や疾患などと関連している場合もあります。
SBの全例に精密健診を受診させる必要はなく,運動発達遅滞の程度が強い者,明らかな神経学的異常(著しい筋緊張低下, 筋力低下,深部反射異常など)を有するもの,それに精神発達遅滞を伴う者を精査すれば十分と思われる.
引用 1歳6カ月児健診におけるshuffling baby の疫学的調査
障害などを見分けるには、医師の判断が必要になります。しかし、病院を受診する前に、本当に心配な症状なのかどうか自分でチェックしたいですよね。
その場合は、普段のお子さんの様子を思い返してみましょう。そして、まずは以下の3点にあてはまるかどうか考えてみてください。
- 母乳やミルクをあまり飲まない
- 泣き方が弱い
- 首がすわっていなかったり、体がふにゃふにゃしている
これらの症状は、「低緊張(筋緊張低下症)」という状態に見られる症状です。低緊張の子供は、筋肉の張りが弱く、体を支えたりうまく動きをコントロールしたりすることができません。その結果、体の発達が遅れてしまい、その特徴としてお尻歩きが見られます。
ただ、低緊張には2つのパターンがあるので、それを正しく見分けることも重要です。
- ただ単に、筋肉が弱いのが理由で起こっている低緊張。赤ちゃんの発達が進むと次第に治っていく。
- 病気や障害があって、その症状として低緊張が現れている
このうち、注意しなければいけないのが「病気や障害の症状として現れている低緊張」です。その見分け方ですが、もし病気や障害などの可能性がある場合には、以下の3点のうちどれか1つでも当てはまる項目があるかもしれません。
- 言葉がなかなか出ず、理解も遅い
- 手指の発達が遅く、握ったり動かしたりという動作がほとんどない
- あまり笑わないなど、表情の変化が乏しい
これらは、ダウン症候群や脳性まひなどに見られる症状です。何か1つでも思い当たることがあれば、一度専門家へ相談されることをおすすめします。
シャフリングベビーかも?と思ったら小児科医に相談を
障害や病気の有無を、素人が自分で判断するのはとても難しいこと。セルフチェックでは障害の可能性に当てはまらない場合でも、かわいい我が子を思えば「もしや…?」という不安感は拭いきれないのではないでしょうか。
そんな時は、迷わず医師に相談してみましょう。子供のことなら、まずは小児科を受診するのがおすすめです。小児科医は子供のことについてのスペシャリストなので、運動発達以外にも様々な心配事に関する悩みを相談できますよ。
「もしかしたら間違いかもしれないし…」などと思って、受診をためらうことはありません。スペシャリストに相談して、何もなければそれで安心できますし、もし何か症状を指摘されても、その後リハビリなどに繋げることができます。
ですので、まずは比較的気軽に相談できるであろう、かかりつけ医を受診してみるといいですね。改まって「子供の発達の件で相談したい」と受診するのはかえって緊張してしまいそう…という方は、風邪で受診した時や予防接種などのついでに相談してみてはいかがでしょうか。
医療機関は他の医療機関との繋がりもあるため、障害に関して専門的な知識を持っている医師を紹介してくれることもあります。受診したことで決して邪険にされるようなことはないので、不安な気持ちが少しでもあるなら、ぜひ一度受診してみましょう。
ちなみに、お子さんがお薬を飲まないことで悩んだことはありませんか?嫌がる子供に上手に飲ませるコツをまとめました。
【実体験】シャフリングベビーのその後は?
シャフリングベビーは、成長の目安よりも少し遅れて発達するだけ。見守っていればいつかはしっかりと歩けるようになる。
そう思ってはいても、いつどのような成長過程を経て歩けるようになるのか。歩けたとしても、運動発達に支障は出ていないか。シャフリングベビーだった子はどのような性格になるのか…など、今後の我が子の様子に不安を感じてしまいますよね。
そこで、シャフリングベビーだった我が子の実際の様子を記しますので、ぜひ参考にしてみてください。運動能力、知能の発達、言葉の遅れ、性格の4つに分けてお話します。
運動能力
娘は1歳3ヶ月で歩行をマスターしてからは、まったく何の問題もなく育っています。歩けるようになると、自分で自由自在に色々なところに行けるのが楽しいようで、家中を喜んで歩き回っていました。
そうして歩行に慣れてしまうと、次第にお尻歩きもなくなりました。むしろ、いつお尻歩きがなくなったのか思い返すことができません…。
2歳になった今では、走り回るし、階段も上手に登れるし、ダンスも踊るし、ジャンプだってします。すべり台も大好きで延々と遊んでいることも。
このように、今では元気いっぱいで、なかなか動かなかった頃がとても懐かしく感じられるほど。ただ、食事中に椅子から降りて脱走しようとするのは困りものですが…(笑)
知能の発達
娘の場合、産まれてから今まで知能面の発達にはまったく遅れがありませんでした。
手指の発達にも異常はなく、保育園の先生に褒められるほどシール遊びやお絵かきも上手です。最近では顔のようなものを書けるようになり、本人もさらにお絵かきが楽しくなってきたようですよ。
色や形なども見分けることができたり、おままごと遊びも大好き。靴下やズボンなども上手に履けるようになりました。もちろん、イヤイヤ期も順調に訪れ…。今はこの難しい時期との接し方に試行錯誤しています(笑)
言葉の遅れ
「ママ」や「ブーブー」など、意味のある言葉を話し始めたのは、1歳5ヶ月頃からでした。このような1語文を話し始めるのは、1歳〜1歳5ヶ月頃が目安とされています。なので、娘は少し遅くはなりましたが、極端に遅れたわけではありませんでした。
その後は急成長で言葉が発達していき、2歳の今では2語文、3語文で話します。まだ「さ・し・す・せ・そ」が言えなかったり、一生懸命話してくれても聞き取れなかったり…。赤ちゃん言葉の名残はありますが、かわいいのでしばらくこのままでいてほしいです(笑)
また、言葉が急成長していったのは、1歳半から保育園に通い始めたことが大きいかもしれません。やはり、集団の中にいるといろいろ覚えて帰ってくるので、成長スピードがとても早いですね。
でも、早いうちから保育園に預けるのは抵抗があるという方もいらっしゃることでしょう。特に0歳児の場合は、断乳などの心配もあるかと思います。しかし、0歳児を保育園に預ける時でも、必ずしも断乳が必要なわけではないんですよ。
性格
性格については…正直手がかかると思ってしまうことがしばしば。
- 物を取ってもらいたがったり、食事を食べさてもらいたがったり、人の力を借りたがる
- 人見知りをする
- 初めての場所では、慣れるまでに時間がかかる
- 警戒心が強く、初めて見た食べ物は食べない
このように、自分が楽な方法を取る・臆病・慎重派・警戒心が強いという性格です。実は、これはシャフリングベビーの特徴であり、このような性格の子がシャフリングベビーになりやすいと言われているんです。
どうしてこのような性格に育つのか。それは、乳児期にお世話しすぎてしまったことが原因とも考えられています。
たしかに、我が家では近くに住む義両親の孫愛が大きかったですし、私自身もなかなか動き出さない娘に何でもしてあげていたなぁ…と思い当たることがいっぱい。
0歳当時のことを振り返り、今思うことは『手を貸しすぎるのは赤ちゃんのためにならない』ということ。本人がやろうとする前に大人が先に手を出してしまっては、自分でやろうという気持ちは育ちませんよね。
もちろん、性格というのは持って生まれたものもありますし、お世話の仕方だけで決定づけられるものではありません。ですが、赤ちゃんの成長を促すには見守ることも大切なんだな、と強く思います。
【実体験】シャフリングベビーの改善方法!
シャフリングベビーは異常ではない。そう分かってはいても、今はSNSなどで簡単に同月齢の子の様子を知ることができます。他の子の成長を見てしまうと、やはりどうしても比べてしまうこともありますよね。
そこで、シャフリングベビーとしては成長がとても早い、1歳3ヶ月で歩行をマスターした娘のことをご紹介します。「自分でやらせることが大切」と気付いた私が積極的に行ってきたのは、主に以下の2つです。
歩行器を用いて「動く楽しさ」を教えた
娘の発達のために、私が一番最初に取り入れたものは歩行器です。
使い始めたのは、腰がすわった頃でした。この頃はまだ、はいはいどころかお尻歩きもしていなかったので、娘がシャフリングベビーだとは気付いていなかった私。
ということで考え付いたのが歩行器でした(笑)歩行器なら簡単に進むことができるので、コツを覚えてからはあちこちに動き回って楽しんでいた娘。デザインも大好きなアンパンマンを選び、意欲的に歩行器に乗れるような工夫もしました。
ただ、歩行器には賛否両論あり、デメリットが存在するのも事実です。
歩行器は、腰掛けた姿勢で床をつま先で蹴って進むので、自力で歩く時の体の動かし方とは異なりますよね。ということは、歩行器が直接的に歩く練習になるわけではないんです。
そのため、歩行器を用いる場合はあまり長期に渡って使用しない方がいいですね。娘は生後6ヶ月〜8ヶ月の期間限定で使用し、さらにつかまり立ちの練習も同時に行なっていました。
つかまり立ちで立つ感覚を身につける
運動発達の他にもムチムチボディ対策に躍起になっていた私(笑)
とにかくこの子の運動量を増やしたい!
その思いで、娘が起きている間はどんどんつかまり立ちをさせていました。娘の様子はというと、最初は少しふらふらしていたものの、そのうちしっかりと立てるようになり、生後11ヵ月でつたい歩きに成功!その後、たっち→あんよへと成長していったのです。
娘につかまり立ちをさせたのは9ヵ月の頃でしたが、もちろん成長・発達のスピードには個人差があります。お子さんが無理なく立っていられるかどうかを見極めたうえで実践してみてくださいね。
よく「歩行練習には手押し車がいい」と言われていますが、私は手押し車は使いませんでした。つかまり立ちをさせているうちに自然とつたい歩きもあんよも覚えていったからです。
ただ、つかまり立ちにはこちらのおもちゃが大活躍していました。
成長に合わせて形が変わり、最終的にはつかまり立ちジムへと変化します。かわいいキャラクターや楽しい音楽に興味を示し、立ちながら遊んでいる姿が多く見られましたよ。
他にも、0歳児期におすすめのおもちゃはたくさんあります。お子さんが大好きなおもちゃで楽しくたっちの練習をしてみましょう。
まとめ
- お尻で歩く赤ちゃんを、シャフリングベビーと呼ぶ。
- うつぶせの姿勢や足裏を床につけることを嫌がり、ゆっくりと成長していくのが特徴。
- シャフリングベビーになる原因は、遺伝や生活環境、赤ちゃんの性格などが関係している。
- 多くのシャフリングベビーに異常は見られないが、稀に病気や障害が関係していることもある。普段の赤ちゃんの様子から見分けることが重要。
赤ちゃんのお尻歩きは確かに珍しい行動なので、「何か異常があるのでは…」と心配してしまうのも無理はありません。
しかし、特に変わった様子が見られないのなら、むしろその珍しい行動を楽しむべきです!たくさん動画を撮っておくなど、今しか見られないかわいい姿をばっちり残しておいてくださいね。もしかしたら、急に歩き出す日が来るかもしれませんよ。